飯久保廣嗣 Blog

先日、小生の事務所で若いビジネス人の勉強会が開かれた。10人程度のグループである。目的は、問題解決、経営問題、意思決定、リスク対応、そして、外交問題、日本の国際社会への貢献、日米間関係と多岐にわたる項目について討議をし、なんらかの知的刺激により自己啓発と具体的なスキルアップを図ることである。

今回はリーダーシップについての討議もなされたが、「優れたリーダーに求められる資質は何か」という質問に対して、その場で明確な回答を示すことができなかった。第一に、このリーダーシップという外来語にどのような日本語をあてたらよいかについて思い悩んだ。結論は出なかった。

国語辞書によるとその定義は、「①指導者としての地位・任務②指導者としての素質・能力・統率力」、となっている。

一方で、私の事務所で働いている中国通で、早稲田大学大学院で国際関係の博士課程に在籍する女性がリーダーの中国語の訳を教えてくれた。1つは、「領導」で、これは多分に英単語の「leader」の音からあてた漢字である。次に「帯頭人」で、人の上に位置するひとという意味。そして3つ目が、「指揮者」であった。広辞苑の指揮者の定義は「①指揮する人・指図する人②特に音楽で、管弦楽・吹奏楽・合唱などの指揮をする人、コンダクター」とある。

日本では、リーダーを指揮者とは言わない。リーダーはリーダーなのである。それで、なんとなく納得するところが日本人の長所であり、また短所でもある。これだけリーダーシップに関する論議があるのだから、是非専門家に、リーダーの定義と日本語にどう訳したらよいかをうかがいたいと思う。

ところで、管弦楽などの「指揮者」が満たすべき条件を考えてみると具体的なイメージがわいてくる。それは、ビシネスのリーダーにも適用できる資質(リーダーシップ)なのかもしれない。独善的かもしれないが以下にまとめてみる。

①自分が演奏できる楽器を持っている。― 自身の専門分野を持つ。

②楽団員の集中した注目を集めることができる。― 尊敬と相互信頼。全体の把握力。

③自分が知らない新しい曲を指導できる。― どのような状況でも問題解決ができる。

④柔軟に一致団結した演奏を指導する。― 目的に向けた統率力。

⑤同じ演奏者で新しい音楽を創る。― 挑戦力・創造力・リスクテイキング。

⑥聴衆を魅了する。― 感動を与える。相手をして意識の高揚が図れる。

⑦何が起きても演奏は中断できない。― 持続性と目的達成への執念。

⑧演奏終了時に盛大な拍手を受ける。― 目的を達成した満足感の共有。

世界的な指揮者であるマエストロ小沢征爾はこの条件を世界的な次元で満たしている。