飯久保廣嗣 Blog

2008年11月26日

筆者の自宅の近所に瀟洒なイタリアンレストランが開店した。好奇心から、1ヶ月ほど前、足を運んでみた。料理の味は合格。支配人やシェフ、その他スタッフは友好的で、店には好感を覚えた。またそのときに、支配人との会話の中で、小生のブログの話が出た。

つい、先日もこの店を訪れた。すると、支配人が小生のブログに対し、読後の感想をひと言いった。それは「なんだかわからない」というものだった。支配人曰く、「ブログは日記である」と。調べてみると、ブログは「ウェブログ」の略であり、ウェブや「インターネット」、ログは「航海日誌」を意味する。従って、この支配人は小生のブログを日記であるという期待を持って読み、難しいことが書かれていたことに、違和感を覚えたのだろう。

そこで、今回はこの店が将来更なる発展を遂げるために、どのような発想を持てばよいかを、論理的分析を用いて、解説してみたい。

第1に、スタッフ全員による問題意識や懸案事項の一覧を作ることである。この際ポイントは、解決策や結論を論ずるのではなく、「何をしなければいけないか」、「何が問題になっているか」といった認識を紙に書き出し、共有することである。その中から、支配人が経験とカンをもとに、「何を最初にやるべきか」を判断し、全員の合意を得ることになる。

第2に、同じエリアのより繁盛している店と比較して、何が違うかを支配人自ら観察し、当店の改善項目を明らかにすることである。例えば、店名の表示方法、最寄の繁華街におけるPRの方法、店内のインテリア、レイアウトの違いの認識、女性スタッフの有無、マーケティングツール(印刷物等)の違い、などが挙げられる。これらに対して、どのような改善ができるかを検討するのである。ポイントは、比較する店が適切なものでなければならないということである。

第3に、当店の特徴、強みの再認識である。つまり、「当店はひと言でいうと、こういう店です」というキャッチコピーを作るのである。その際は、このキャッチコピーを決定する前に、「このコピーに決めた場合、どんなマイナスがあるだろう」と、考えることがポイントとなる。とんだ落とし穴があるかもわからないからである。例えば、「他店が類似のコピーを使っている」などだ。

第4は、リピート客確保を大々的に展開することである。当店は、初めて来店したディナーの客に対し、朝食用のお土産としてロールパンのサンドイッチを無料で提供している。これ事態、非常に客から見れば魅力あるサービスだ。こうしたことを、よりPRすれば集客につながるのではないか。またどうせなら、お土産を渡すときに、記帳してもらう洒落たノートを用意してはどうだろうか。サービス券を発行するのも一つの方法かもしれない。

第5は、このような努力をしたにも関わらず、結果がでない場合にどうするかを、予め検討しておくことである。簡単に言えば、第2、第3の手を考えておくということだ。

第6に、行動を起こすときに「何のために、どのような目的があって、その行動を起こすか」という、意識を持つことである。例えば、「お土産を出す目的は何か」、「朝5時まで営業する目的は何か」といったことである。

現実を見て、比較をして、目的意識を持って改善策を実施し、起こり得るマイナス現象に対して準備をするために、2次、3次の手を考えておく。これは論理思考の初歩中の初歩といえる。論理思考は身近な問題にも応用可能なのである。

どうでしょう、参考になりましたか? ぜひ次回うかがったときに、今回のブログの感想を聞かせてもらえればと思う。

2008年11月17日

人間はモノを決めるときに手段に短絡する習性がある。多くの場合はこれで問題なく社会生活を円滑に送ることができる。「昼食を何にするか」、「どこに遊びに行くか」、「何時に就寝するか」、などの判断は直感的であり、深く考える必要はない。しかし、テーマによっては、「何のために?」という目的を、深く考える必要がある場合もある。

目的と手段を混同すると、堂々巡りが始まり混乱や対立を招く。じっくりと目的を考えてから、最適な方法や手段を選ぶことが合理的な場合もあるのだ。

確かに、目的を意識しないで手段の上達に邁進する場合もあるが、その結果、多くのムダを生むこともある。その代表的な例が「ビジネス英会話」の学習であると思う。その真の目的は何だろうか。「外国人との英語による意思疎通を円滑にすることがビジネス英会話を学習する目的」と思っている人が多いことに驚く。

ビジネス英会話の学習の目的が、このような生易しい発想では上達はおぼつかない。そこで、何のためのビジネス英会話かを明確にしたい。ある人は、「それはコミュニケーションのためである」という。また、「英語は国際ビジネス用語であるから」ともいう。「これからの国際化時代の重要な条件であるから」という人もいるだろう。しかし、このような曖昧なことでよいのだろうか。

筆者の恩師(故人・米国人)はあるとき、人間が最も生き生きと活動していくためには5つの条件が必要であると言った。それは、Purpose(目的)、Perspective(将来の見通しや展望)、Increasing Skill(自分の諸スキルの強化)、Joy(悦び・満足感)、そして、Sense of Belonging(帰属本能が満足されている)であると教えてくれた。

これを、ビシネス英会話の学習に当てはめて見るとどうなるか。その第1としての目的は「問題解決の真剣勝負に勝つためのである」といえよう。ある人は、ビジネスとは「平和時における戦争の形態」とまで言い切っている。ビジネス戦争に勝つために有効な武装が英語力であるという認識を持つことが重要で、それが目的の1つとなる。

第2のPerspectiveであるが、これは「現在の自分の実力から出発した学習計画」ということができる。英会話はヒアリングからという考えがあるが、日本人にとって必要なことは「発信する」、「発言する力を強化する」ことではないか。ヒアリングで理解できないことがあれば、質問をして確認することができる。肝心な事は、今の自身の実力レベルでできることを完全にものにすることである。中学や高校の英語の教科書をつかえることなく、スムーズに読める人が果たして何人いるだろう。これができるだけでも発信に自信が付く。Perspectiveは現実的なところから始めるべきである。

第3のIncreasing Skill とは、「自身が立てた目的に対しての進捗度を確認すること」であり、それが次の第4にあたるJoyに繋がる。Joyは単なるHappinessではなく、努力の後にある満足感のことかもしれない。最後のSense of Belongingは帰属本能であり、英会話の場合、「話をする相手を持つ」ということである。英語を使う相手を、英語を母国語とする人に限定することは誤った先入観である。アジアの人たちとも大いに語らったらよい。

結論的にいえば、ビジネス人にとっての英会話学習目的は、英語によるコミュニケーション力をつけることや漠然とした願望というものではない。厳しい国際ビジネス戦争に打ち勝つための問題解決を有利に展開するための不可欠な武装であるという認識が、まず必要である。そして、英会話力のもう1つの側面は、相手に質問をすることである。そして、できれば問題解決のための論理武装を背景とした質問力まで身に付けることが本当の目的ではないだろうか。

2008年11月10日

「このところ日米関係に対立した問題はなく、従って両国の関係は良好である」というのが最近の日米関係に対する多くの認識である。しかし、そうした認識が続いた結果、起こったことがある。それは、“Japan”という活字や関連する発言が米国のメディアからほとんど姿を消してしまったことだ。それに替わって、頻繁に上げられる国が中国、インド、ブラジル、そして別の観点からの中近東諸国である。

米国大統領のキャンペーンにおけるオバマ候補の発言にも“Japan”はほとんど出てこなかった。このことを捉えて、「現在の日米関係が良好であり、解決するべき課題がない」と判断することは適当ではない。対立する利害関係がないことは結構であるが、そこで思考停止をされても困るのである。

オバマ候補が「変化―CHANGE」をスローガンに勝利したのであれば、我々日本国民としてもチャレンジングな日米関係のあり方を建設的な課題として提示し、問題解決を図るための前向きの緊張関係を作り上げることを望みたいのである。

利害が必ずしも一致しない国家間の付き合いで、「良好な相互信頼を構築する」ということは、必ずしも波風の立たない静寂の状態を維持することではないのかもしれない。国際社会の紛争を解決し、安定を維持するために、建設的な課題に対して緊張した状況の中で問題解決を図る過程から、さらなる理解と信頼関係が生まれてくると考えたい。この意味からも、オバマ時代の日米関係には日本側から革新的な課題を提供したいものである。

例えば……

●現在の憲法下であっても、極東の安定のために、中国の最近の軍事力の強化を考えて、日本の海軍と空軍の軍備をどの程度増強する必要があるか。
●また、その結果どのような問題が発生し、どのような現実的な対応ができるか。
●日米の優秀な人的資源を世界の安定のためにどのように活用できるか。
●化石燃料に変わる原子力発電を地球規模でどのように安全に開発しマネージするのか。
●軍事的な方法以外に紛争を解決する手段を日米でどう開発するか。
●中国のプレゼンスの拡大に対応する日米同盟はこれからも強化するのか否か。
●日米の先端技術領域で平和と安定のための共同開発テーマをどのように展開するか。

……など、枚挙にいとまがない。しかし、これらは、日本側から日本のイニシャチブで発信することに意味がある。

オバマ新米大統領はそのお人柄からして、日本側の受身の姿勢に対しては苛立ちを感じるのではないかと思う。日米関係のCHANGEに対して積極的な問題提起をする日本こそを、逞しいパートナーとして認めるのではないだろうか。

それにしても、11月2日のNHK番組、「ホワイトハウスに日本を売り込め」というのがあった。何故、アメリカに日本を売り込む必要があるのか。第三者に対して自分を売り込むということは、対等な立場でないことを意味する。このような行動をとっておいて、一方「日本は米国の言いなりだ。米国に追従している」と煽り立てる。国民もそのように思い込んでしまう。

また、よく目にすることは、相手に「理解を求める」という発想である。これも相手と対等な立場にあることではない。国際社会では卑屈な行動として見られる。米国をはじめ世界の主要国が相手に「理解を求める」といったことはほとんどないのではないだろうか。また、途上国ですら、「要求する」「説明を求める」「主張する」であって、「理解を求める」という発想はないのではないか。「理解を求める」は物事を円満に収めるという文化を持つ日本社会でのみ通用する発想であることを再認識したい。

繰り返しになるが、日米関係の強化と世界社会の安定のために、日米共同で展開できるグローバルな「CHANGE」に対して、オバマ新米大統領に日本も日本人も大いに革新的な問題を提示したいものである。静寂はいつか破られる。そうであるならば、建設的な緊張関係を創るためのイニシャチブを日本から発信したいのである。

2008年11月04日

これまでに私は日本の意思決定の精度について、意見を述べてきた。意思決定の迅速性に関しては、日本は改善の余地があると考える。一方で、米国の意思決定の精度(質)は、最近の金融市場の混乱を見ると、疑問を持たざるを得ない。つまり、これはグローバルな問題になってきているといえる。

その本質は、「意思決定の品質のマネジメントをどのようにコントロールしていくか」ということである。意思決定では「ある案件に対して複数の選択肢から最適な案を選ぶ」という冷静なアプローチが必要である。それにも関わらず、グローバルなイシューに対して、方法に短絡をする傾向がより強まっている。

これも、正確な情報にのっとった短絡ならば許されるのかもしれない。だが、不確定情報や捏造情報を基にした意思決定への短絡は大きな災いをもたらす。その例の1つが、ジョージ・W・ブッシュのイラク攻撃だろう。

場合によっては、経験やカンを基に即座に意思決定することも必要だが、その際には必ずマイナス要因の分析を怠らないことが条件となる。例えば、イラク攻撃では、「当時のホワイトハウスに入る情報が不正確だった場合のコンセクエンス」、「そのコンセクエンスからくるマイナス」、「軍隊を出動した場合の長期泥沼化の可能性」、「現地の対米感情の悪化の可能性」など、枚挙に暇はない。

このような発想でマイナス要因を分析していたならば、素人の意見ではあるが、別の選択肢があったのかもしれない。これが意思決定の品質のマネジメントの効果なのである。

わが国が国際社会において、イニシアチブを取る場面はあまり見られない。しかし、新総理が各国に対して独自の提案をする場合には、意思決定の品質のマネジメントを充分に考えてもらいたいものだ。