飯久保廣嗣 Blog

思考様式のイノベーション

企業は常に問題発生や非常事態の発生を想定し、マスメディアへの対応を準備しておかなければならない。この際重要なことはメディア対応への論理的な思考の枠組みを確立しておくことである。この思考の枠組みを持つことにより、事態の拡大を防ぎ、対外的な悪影響を少なくすることが可能になる。

下記は問題が発生し、それが公になり、メディアに対応する場合、どのような発想をしたらよいかの一部を説明するものである。

1.問題の想定と対策の立案
問題になりそうな諸不祥事や諸クレームを予め想定し対策を考えておく。この対策を的確に設定するためには、「問題は起きないだろう」と考えることから、「問題は起こりうる」と言う発想の転換が必要である。また、できるだけ、「クレームの発生」という漠然とした想定ではなく「XX製品に△△不良が発生」というように具体的に考えることが肝要である。

2.暫定対策の事前策定
この対策は、問題発生状況の拡大を防ぐ対策である。組織への損害を最小限にとどめるための対策を事前に策定しておく。そして、問題が起きたらその対策を発動し、取材や記者会見ではこの対策が実行されたことを開示する。

3.情報収集の枠組みの構築
発生現象を的確に把握するための情報収集の枠組みを予め定めておく。その発想は、「何が」、「どうした」、「いつ」、「どこで」、「どれくらい」の5つの切り口(項目)をベースとする。例えば、「A電気製品」の「配線不良」が「X年X月」に「関東地区」の「25店舗」で発生した、といった具合である。また、発生現象のポイントを絞るために、起きていない対象や現象に関する情報も集める。例えば、「B、C電気製品ではない」、「機能不良ではない」、「X年X月以前には発生していない」、「関東地区以外では問題ない」、「関東の25店舗以外では発生していない」という情報を収集する。これを「ある/ない情報の収集」という。

4.不明確項目の調査と開示
上記3について、すぐに明確にならない項目に対しては調査する。その場合、「現在『いつ』については、調査中」、「調査中だった『いつ』については、判明したので報告します」と、
進捗状況をその都度結果をメディアに開示する。

5.推定原因の消去
推定される複数の原因を判断し、それらのうち、真の原因でないものを論理的に消去する。これは、上記の「ある/ない」の一対の事実の矛盾を見ることで、判断する。

上記の例でいえば、仮に「A電気製品の配線不良」が推定原因とした場合、「関東地区」に起きていて「関東以外」で起きていないという事実を説明できない。また、「関東の25店舗」で問題が発生して、「関東の25店舗以外」で発生していないことも、論理的に説明できない。だから、「配線不良」は原因にはならない。

メディアからの「会社の製造工程に問題があるのでは?」、「品質管理体制が機能していないのでは?」といった非難や告発に対し、上記のような説明で、論破することが可能になる。

現実は、上記のように単純ではないにしても、起こりうるトラブルを予め想定し、対応を考えておくことは、問題の拡大防止に役立つ。さらに、マスメディアにも冷静に対応することができる。問題発生のメディアに対する初期の対応の良し悪しで、必要以上に傷口が広がるのを、防ぐことが可能となるのである。

日本の競争力は世界で24位

スイスのIMD(経営開発国際研究所)は去る5月、『2007年世界競争力年鑑』を作成し、日本の競争力の順位が昨年の16位から24位に下がり、他方、中国は昨年の18位から15位に上がり、1998年以来9年ぶりに日本を上回ったと報じた。

IMDは55の国と地域の「マクロ経済」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」「インフラ」の4分野に関する統計や聞き取り調査の結果を集計し、国の競争力を示すランキングを作成しているが、日本はこれら4分野のすべてで順位が後退し、特に「経営者の企業家精神」が53位に評価され、「ビジネスの効率性」では22位から27位に後退した。アジア勢の中で言えば、日本はシンガポール、香港、中国、台湾、マレーシアの後塵を拝する位置に置かれることになったのである。