飯久保廣嗣 Blog

日米同盟関係がより重要になる中、米下院外交委員会で、日本政府に謝罪を求める慰安婦決議案が可決され、7月中にも下院本会議で採決の見通し、という報道があります。これは両国にとって、非常に不幸なことであり、日本政府に傍観するだけでなく、積極的な対応をお願いしたい外交案件です。

ところで、この法案の推進役は、マイク・ホンダ氏という日系の下院議員であります。ご本人の政治的野心から、カリフォルニア州政府から、連邦政府への転身を図る道具として原案を起草し、反日感情の多い、中国系や韓国系米国人の支持・支援を受けたといわれています。私はこの内容について深く触れるつもりはありません。ここで私が問題にしたいのは、日本人を先祖に持つマイク・ホンダ議員が、反日行動の先頭に立っていることです。

米国は移民主体の国であり、日系以外にもドイツ系、イスラエル系、イタリア系など数多くの移民が暮らしています。ドイツ社会に対して、ドイツ系米国人がこのような行動をとった例はないでしょう。逆に、米国のユダヤ系市民は祖国イスラエルのために、米・イスラエル関係の友好推進役を担っています。これが自分のルーツがある国への一般的な行動ではないでしょうか。

ではなぜ、ホンダ議員が祖国である日本に対して、このような行動を起こすのでしょうか。

この問題に対し、私は次のように考えます。それは、日本人も、日本国も、米国の日系社会に対して、太いパイプを持たないことが、ひとつの背景なのではないかということです。

日本の敗戦直後、東京で餓死者が出ていた時代に、いち早く、“CARE物資”という基金を立ち上げ、食料や衣類を日本に送ったのは、カリフォルニアに住む日系2世であったとききます。彼らは、3食のうち1食を抜き、その分を基金に当てたという話もあります。この恩義に対して、日本と日本社会が報いたという話は、残念ながら皆無です。

また、日系市民連盟(The Japanese American Citizens League)が、2年に1度全国大会を開催していますが、この大会に、日本の駐米大使が出席し、式辞を述べた事実はありません。JACLが、大使館や領事館に招待状を出しても無視されてきたという事実を数年前、聞かされました。これは、日本人として恥ずべきことではないかと思うのです。

一方で、米国には、米日協会という親善組織が30数箇所にあり、それらを統括して、ワシントンに全米米日協会があります。これらの団体は、素晴らしい活動をされていますが、指摘すべき事実は、各地の米日協会で日系米国市民がメンバーとなっていないということです。各地の米日協会の会員は、日本の現地法人の役員や社員などです。そして、地域の親日的な米国人の実力者も名を連ねています。ここでも、日系米国人と、日本の間に交流は見られません。

なぜ、このような状況になってしまったのでしょうか。ここからは私の推測ですが、戦後、日本企業が米国に進出した時代は、日系市民の社会的地位が低かった。だから、企業が米国社会に受け入れられるためには、白人米国人を重要視せざるを得なかった。このことが日系軽視につながり、極論をすれば、その時代の風潮をそのまま引きずり、今日に至っている。私はそう、思うのです。日本のためにも、日系米国人のためにも、この状況を改善していく必要を痛切に感じます。

JACLの会長が、慰安婦決議案について、ある新聞でこのように述べていました。

「大部分の日系人は、この問題が取り上げられるべき理由はないと考えている」、「この問題が注目されることで、日系人に対する偏見が強まりかねないことを危惧(きぐ)している」。この言葉の中には日本を非難する発想や表現はありません。このことを、我々はしっかりと受けとめたいものです。