飯久保廣嗣 Blog

米国産牛肉の輸入がついに解禁されました。しかし、報道によると、「米国産は買わない」という消費者が少なくないようで、売れ行きは芳しくないと聞きます。米国は、「買われないのは、規制などのnon-tariff barrier(非関税障壁)があるからではないか」と、発想する可能性があり、私はそれを危惧しております。

過去にもそうした発想で、米国が日本にクレームを付けたケースは多々見られました。例えば、米国の圧力でアルミニウムの高率関税が撤廃されたにも関わらず、米国製のアルミバットの売上げが一向に上がらないことがありました。すかさず米国の大手メーカーが拠点を構える州の知事が「non-tariff barrierがあるはず」と、日本にクレームを付けてきました。

そこで、州知事の友人だった私は、その状況を見かねてひと言アドバイスしました。「日本のメーカーは野球場まで赴き、選手の意見を丁寧に聞いて回っている。そのフィードバックにより良質な製品の開発に成功している。それに対して、米国のメーカーはどうなのか」と。つまり、規制や障壁などは存在せず、売れないのは製品開発、販売方法などマーケティングの問題だったのです。

歴史は繰り返すといいますが、米国産牛肉がそうした過ちに陥り、日米間に無用な軋轢を生まなければいいと、私は思っています。

日本側もそうした状況にならないように打つ手はあるのではないでしょうか。全ての牛肉処理施設を毎日検査するのは不可能なので、問題や事故は今後も発生する可能性があります。そうであるなら、コンティンジェンシーの概念を用いた交渉を米国とするべきでしょう。

つまり、骨髄が混入するなどルール違反があった場合、我国の消費者、販売店、流通業者、輸入業者等に対する損害の補償を取り付けることも交渉に含まれるべき重要な項目です。
具体的には問題の重大性に見合った高額な賠償金の支払いを決めるわけです。こうした補償が決まっていれば、供給側も真剣に問題の発生防止に取り組み、安全性が高まることで不必要な日米摩擦を防ぐことができるのではないでしょうか。

問題の発生を100%食い止めることはできない――。この原点に立ち戻るような発想の転換が、解決の糸口になると、私は思います。