飯久保廣嗣 Blog

スイスのIMD(国際経営開発研究所)が毎年発表する「世界競争力ランキング」によると、日本は1989年~1992は第1位だったが、その後凋落の一途をたどり、94年が4位、96年が17位、02年が27位となった。そして、2009に発表された最新の結果は、1位は米国、2位香港、3位シンガポール、そのあとはスイス、デンマーク、スエーデン、オーストラリア、カナダ、フィンランドと続き、日本は17位となっている(出典:2009年IMD―The World Competitiveness Scoreboard)。ちなみに、マレーシアは18位、中国は20位、台湾は23位である。

このIMDの評価は国の競争力指標として適切でないとの批判もあるが、国際的には認められている調査結果であり、日本の総務省も参考に使っている。2009年度に発表された結果は、世界の57カ国・地域を対象とした、(1)マクロ経済(経済パフォーマンス―Economic Performance)、(2)政府の効率性(生産性・能率性―Government Efficiency)(3)企業の効率性(生産性・能率性―Efficiency)、(4)国のインフラ(Infrastructure)の4領域に関する329の調査項目の集計である。

日本の順位は上がったものの、いまだ低迷しているといわざるを得ない。順位の向上に避けて通れない課題が、政府と企業活動の効率、Efficiencyの改善である。言い換えれば、マネジメントの効率であり能率なのである。日本は物の製造における生産性・効率性・能率性は高く、その品質や競争力において世界に確固たる実績を残している。これは、生産工程を標準化し、品質の管理を徹底することによりなされた。

翻って、政府や企業のマネジメントにおける生産性を考えると、この領域が世界のスタンダードから非常に遅れているのである。このことは、組織が進める意思決定やリスク対応の生産性が低く、結果として意思決定(思考業務)のコストが物の生産と比べて非常に高くなっていることを意味している。 

いくら不良品(不適切な意思決定)が発生しても、製品の不良のように返品が山のように詰まれるわけではなく、事の重要さを見過ごされているのが現状である。これは、組織の最高責任者が重要視すべきことであるとともに、個々のビジネス人も論理武装しなければ厳しい競争を勝ち抜くことは示唆している。