飯久保廣嗣 Blog

対策・措置という表現は、一般的によく使われている言葉です。問題が発生すると、何らかの対策を講じなければ解決に結びつかないことから、やたらに「対策を打て!」と叫ぶ場面が数多く見られます。

ここで、基本的に整理をしなければならないのは、「過去に起きた現象への対策」なのか、「将来起こりうるかもしれない問題への対策なのか」ということです。

過去に起きた現象とは、例えば、家庭においては「子供の成績が下がってきた」ということ。また、地域社会では、「住民同士の対立を解消しなければならない」、企業でいえば、「売上目標が達成できない」、「市場クレームが発生した」、国家でいえば、「税金の使い方に無駄が生じている」、「日中、日韓の間に問題が発生した」など。こうしたいろいろなレベルの問題に対応するための対策が必要となります。

過去に起きた現象に対しては、発生原因を究明することから始まり、最終的に解決のための対策を立案することになります。ここで考えたいことは、「どのような目的を念頭に対策を講じるか」を意識することです。これによって対策の精度や効果が左右されます。

目的は大きく3つに分けられます。「①発生している状況を拡大させないための対策」、「②発生原因を取り除くための対策」、「③発生原因を取り除く対策が現実的でない場合に、その状況に応じた対策」となります。

子供の成績を例にとれば、①の対策では、「学校を休ませないようにアドバイスし、支援する」、②では、「まず成績という抽象的な捉え方から、どの科目が悪いかを明らかにし、それが数学であればその実態を把握して、仮に他の科目に比べて予習が足りないということであれば、予習を促進するための方策を考える」ということになり、③では、「苦手な数学をあきらめて、他の国語や歴史などの得意そうな科目の成績アップに注力する」ということになります。

①は、「暫定対策」――発生する状況の被害の拡大を防ぐための対策
②は、「抜本対策」――問題の発生原因を排除するための対策
③は、「適応対策」――原因が明確だが除去できない場合の対策
となります。こうして過去に起きた現象に対する対策は整理し、現在の状況を見て、どれが最も効果的な対策かを考え、場合によっては、複数を同時並行で講ずる必要があります。

では、将来起こりうる問題に対する対策はどのように考えられるでしょうか。この対策の前提条件として、「必ず問題は起こりうる」という発想が必要です。起こる確率が低いとしても、絶対に起こらないとは言い切れないのが現実だからです。

その上で、まず起こりうる問題を想定し、なぜ問題が起きるのか、その原因を考えるプロセスが必要となります。そして、「④将来問題の原因を取り除くための対策の立案」がまずはひとつ目のアプローチとなります。

また、どのような対策を講じても、未然に問題の発生を根絶することは保証できません。そこで「⑤万が一、問題が起きたときにその影響を最小限に抑えるための対策を予め策定すること」がもうひとつの対策となります。

例えば、火災への対策として、火元の管理の徹底が④の対策、火災保険に加入することが⑤の対策となります。

言い換えれば、将来に対する対策は、
④が、「予防対策」――問題発生の可能性がある原因を除去する対策
⑤が、「コンティンジェンシー対策」――発生時の影響を最小に抑えるために予め講ずる対策
となります。

このようにわれわれが日常使っている「対策」という言葉も、①~⑤の目的別に意識をすることによって、適切な対応が打てるようになります。