飯久保廣嗣 Blog

今年(2007)5月10日の日本経済新聞の記事によると、スイスIMD(経営開発国際研究所)が発表した2007年世界競争力年鑑で、日本は中国の15位を大きく下回り、24位に後退しました。これは、IMDが、55カ国と地域について、「マクロ経済」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」、「インフラ」の4分野、323項目を分析した結果に基づきランキングを作成したもの。本日はこの深刻な結果の背景を改めて考えたいと思います。

特に低評価なのが、政府の効率性(26位→34位)とビジネスの効率性(22位→27位)の2分野。政府の効率性が、優秀な霞が関のキャリア官僚がいるにもかかわらず、これほどまでに低く評価されていることを、不思議に感じました。報道では、同分野を項目別に見て、「法人税率」(55位=最下位)、「政府債務」(54位)などが足を引っ張っていると解説していますが、私はそれ以外にも、次のようなことが挙げられると思うのです。

①官僚主導の大型海外プロジェクト(中国やサウジアラビアの油田開発等)の失敗や撤退を、IMDが認識し、評価に反映している。
②さらに、こうした事実を公にせず、闇から闇へと葬っていることも知っている。減点主義と、面子のために失敗は認めないといった、日本人が持つ独特な[発想]と「思考様式」を非効率であると見なし、それもこの評価軸に加えている。

また、ビジネスの効率性に関しては、意思決定の迅速性とその精度に問題があるというひと言に尽きるのではないでしょうか。シンガポールや韓国、台湾企業のトップダウンによる意思決定の速さ、変化への対応の見事さに対しては、残念ながら現状では日本は太刀打ちできないといえます。

韓国では約10年前の通貨危機以来、政府や企業の意思決定のスピードが速まったといわれています。このことは、組織のトップとその幕僚(幹部社員)が、論理的な思考をもって、意思決定や問題解決をし、上意下達を自信を持って進めているからだと思うのです。シンガポール、台湾もまた然りです。

IMDの調査において、アジア諸国で日本を抜いたのは、中国だけでなく、台湾、マレーシアという国名も挙がっています。「思考業務のイノベーション」が、政府にも企業にも必要であることを、この調査結果は如実に物語っています。