飯久保廣嗣 Blog

世の中、人手不足、人材難が非常に深刻化しています。企業にとっては、若手社員の育成が焦眉の急といえますが、なかなか短期間での即戦力化が難しいのが日本企業の現実ではないでしょうか。

これは日本の知識偏重の教育と無関係ではないと思われます。小学校教育の現場では、今も昔も、「知識」に関心を持たせることが中心で、「考えること」への興味の喚起に重点を持ち、教師は少ない。
例えば、夏休み前に宿題を出されて、子供が「なぜこの宿題をしなければならないのか」という疑問を持ったとしましょう。それを先生にストレートにぶつけたとしたらどうなるか。先生はきっとこう答えるでしょう。「余計なことを考えずに言われたことをしっかりやればいい」と。

この「なぜ」という疑問こそ、考える力を養うための原点であり、それが芽生えた瞬間が“Teaching Opportunity”なのです。子供が、根拠、目的を問うという重要な発想を持っているのに、それを摘み取ってはせっかくの教育機会を逃すことになります。先生は、その根拠や目的を丁寧に説明するか、もしくは「なぜだと思う?」という質問によって「考えること」を促すべきでしょう。

しかし、実際はそれがなされず、その後も考える力は強化されないまま、新入社員として企業の一員となります。彼らは決して資質が劣っているわけではなく、むしろ潜在的には多くの可能性を秘めています。ただ、「考えること」の訓練機会が少なかったため、主体的に動こうとしない「指示待ちの社員」が多く見られるのが現状です。

長期的な解決策としては、「考えること」を中心とした学校教育が必要でしょう。一方で今の新入社員の即戦力化には、とにかく否が応でも考えて行動しなければなければならない状況を与えることも一つの方法ではないでしょうか。
例えば、新入社員研修で、「1週間で長崎のちゃんぽん店の実態に関する報告書を作成せよ」などといったテーマを設定し、現地に出張させるのです。こうした突拍子もないテーマが、新入社員にとって、調査目的の設定、調査項目の検討、スケジュールの作成、調査の実施、報告書の作成といった段取りを一から考える訓練となり、結果を残すことで自信にもつながると私は思います。

企業の人材育成部門は、過去の延長線上にとらわれない手法も考慮に入れて、新入社員育成プログラムの中で、「考える力」――思考技術力の訓練にぜひ取り組んでほしいと思います。