飯久保廣嗣 Blog

経営用語に「コンティンジェンシー」という言葉があります。ビジネス人にとって耳慣れない言葉かと思いますが、それは、有事対策、緊急対策、予備計画などを集約した概念といえます。日本語にはこれらをまとめてひと言で表現する言葉は存在しないのが現状です。

私なりにコンティンジェンシーを定義するならば、「問題が発生した時点でその影響を最小化するために予め立案されるべき諸対策のこと」となります。例えば、有事対策であれば、「戦争時に国がこうむる可能性がある損害を最小化するために予め立案しておく諸対策」ということになるでしょう。

最近、ある企業のトップのエネルギー問題に関する講演を聞きました。日本の対イラン原油依存率が全輸入量の13%にもなるなど興味深い話が出ましたが、講演後、参加者から次のような質問がなされました。「もし、この13%が確保できない場合にはどのような対策があるのでしょうか」と。これに対する講演者の回答は驚くべきものでした。講演者は、「そのような事態はまず発生しないと思いますし、またそう希望しています」と答えたのです。

これは、コンティンジェンシーとは正反対の発想であり、受け入れがたいものです。しかし日本ではそのまま、まかり通ってしまうところがあり、そこに私はある種の危険性を感じます。世界のどこの先進国を探しても、このコンティンジェンシーという概念が広く認識されていない国は日本だけだということを、私たちは再認識する必要があるのではないでしょうか。